義父の絵
義父が亡くなって三年経ち、二階のアトリエに置いたままになっている絵の始末が義母の重荷になってきた。
そこで義母は行動に出た。
100号以上の大きな絵を絵仲間に譲ってしまうことにした。
そうすれば義父の絵は下絵となり、キャンバスに新たに描かれる絵に厚みが増す。
渡す前に写真を撮ってくれというので撮ってきました。
お義父さん、こんな絵も描いてらしたのですね。
100号以上の大きな絵は展覧会に出した物を会場で見るしかなかったので、初めて目にするものが多い。
旅行の絵はサインがないから作品までには仕上げてなかったのかな。
お義父さんは浅間山が大好きで、小さなアトリエを構えて四季折々の浅間山をたくさん描いていますが、大きな絵はこれしかなかったです。
晩年は縄文土器からインスピレーションを得て?、祀りの記と題するような古代に思いをはせた幾何学的な模様の心象画を好んで描いていた。
展覧会で目にしたのもその類で、さして親しみを感じるでもなく、感動を伝えるでもなく、年中行事のようにただ見に行っていたが、こうして60枚以上の大作を一枚一枚見てみると、お義父さんが絵と真剣に向き合ってきた人生が感じられて切ない。
これらが全て人の絵の下絵になるって、そんなことしてよかったのかな。。。
お義母さん、一部屋を占領していた大きな絵たちがもらわれていって、ぽっかり空いたさみしい部屋できっと涙がでましたね
写真、届けますから、待っててくださいね。